韓国の鳥インフルエンザ発生について思うこと

2014年1月16日から韓国のあひる農場を中心に続発しているH5N8による鳥インフルエンザについて書く。

やっと、最近は続発がなく、終息しつつあるようだ。原因と考えられるトモエガモは、日本国内にも渡ってくるので、国内発生が心配だが、幸いにも現在までは発生は野鳥も含めて認められていない。

渡り鳥がいなくなるゴールデンウィークまで、この平和な状態が続いてほしいものである。

さて、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合、日本国内において、発生農場を中心に半径3km圏内を移動制限区域、半径3kmから10km圏内を搬出制限区域とする。殺処分の対象となるのは、発生農場における飼養鶏で、3km圏内は、農場からの鶏や汚染物品等の移動は制限するが、殺処分は実施しない。

しかし、韓国では、半径3km圏内のあひる農場及び養鶏場において予防的殺処分を実施している。

公益の福祉が個人の利益よりも優先される中国ならわかるが、自由主義経済圏の韓国で、よく3km圏内まで殺処分できるなあと思っていたのだが、その根拠が2月17日の韓国農林畜産食品部プレスリリースに記載されていた。

韓国における高病原性鳥インフルエンザ(H5N8亜型)の発生について

・韓国農林畜産食品部プレスリリース (2014年2月17日10時00分)(PDF:696KB)

「特に、忠清北道鎮川(チンチョン)市・陰城(ウムソン)郡の場合、危険地域3km以内の予防的殺処分対象の28農場で14件(50%)が陽性 (別添2)が確認されたため、先制的な殺処分をしなかったとすれば、周辺でAIが広がった可能性が多いと専門家で構成された家畜防疫協議会委員らが評価した。」

なんと、3km圏内の農場のうち、50%が陽性だったのだ。今回の韓国におけるHPAIの発生は、野鳥(おそらく、トモエガモ)か、野鳥から野生動物を介して、ウイルスが農場内に侵入したと考えられる。14件に疫学的関連がないとすると、農場外から農場内へのH5N8の侵入が防止できていないのだろう。

3km圏内の予防的殺処分実施には、韓国内の養鶏業者からの反発もあるのか、今回のプレスリリースには、この防疫対策に対していいわけが述べられている。
「参考として、EU、米国、カナダ、日本等でも我が国と同様、発生農場を中心に防疫地帯(3km、10km)を設定して、移動制限等の防疫措置を実施している。国家別に状況が違うため直接の比較は難しいが、これら先進国でも発生状況、飼育密集度、疫学調査等を総合して、必要時に疫学農家及び一定地域(1〜3Km)に対して予防的殺処分を実施している。」

木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6 清浄国(FMD free)のお墨付きは意味があるのか。」に対する指摘


朗報である。


木村盛世氏(以下、もりりん)がやっと口蹄疫に関する発言をやめるらしい。


「疫学とは常識の学問である。既存の理解と違う結果が出ても、自然界での摂理に従う説明がつく。もう口蹄疫の議論から暫く離れよう。空気に支配されている輩に何を言っても無駄ある。これが我が国の実情だ。」


http://twitter.com/kimuramoriyo/status/16140525643


「空気に支配されている輩」の意味がよくわからないが、彼女に口蹄疫に関する発言をやめようという気にさせたことにplecostomus1の日記が少しでも関連しているのなら光栄である。
(たぶん、読んでないと思うけど。。)


さて、先のTweetが事実なら、最後になるであろうもりりんの口蹄疫に関するブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6」が投稿された。
最終回のお祝いとして、こちらも最後の指摘をする。


//→木村盛世氏の引用部分
☆→plecostomus1のコメント
口蹄疫→FMD


口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6 清浄国(FMD free)のお墨付きは意味があるのか。」


http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/06/vol6.html


//国際的に、FMD freeであることが
//貿易の面で重要とされていますが、
//今回はFMD Freeとはどういうことか、
//果たしてそれ自体、達成可能なものなのか、
//という事について書いてみます。

//現在の清浄国の定義は、OIE(国際獣疫事務局)の定義に基づき、
//我が国では農林水産省が規定しています。
//(http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie6.html
//http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie/pdf/rm5fmd.pdf
//これを見る限り、
//ある一定期間FMDの発生が抑えられているというのが
//「清浄国」という条件のようです。


正確に言うと、その国がFMD清浄国かどうかは、農林水産省がOIEに申請して認定を受ける。


//しかしながら、本当にdisease freeというのであれば、
//この世界からFMDウイルスがなくなる事が必要です。
//これは根絶(eradication)といい、
//制圧(control)とは明確に分けられている概念です。



ウイルス感染症の征圧状態を定義する用語については、以下のサイトが詳しい。


霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第180回)9/13/2009 新刊書「史上最大の伝染病・牛疫:根絶までの四〇〇〇年」:


http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf180.html


以下、引用。


「ところで、ワクチンによるウイルス感染症との戦いは、戦略的に見ると達成状態により「制圧」、「排除」、「根絶」の三段階に分けられている。
第一段階の「制圧」は、ワクチン接種により、ウイルス感染の発生頻度や激しさを無害なレベルにまで減少させることができた状態をいう。
第二段階の「排除」は特定の国または地域でウイルス感染の発生が見られなくなった
状態であって、獣医学領域では「撲滅」の用語の方が一般的であるため、本書ではこ
ちらを用いる。
第三段階の「根絶」は全世界で発生が見られなくなった状態である。」


宮崎県は、「制圧」しようと努力している状態。
FMD free国、地域は、「排除」「撲滅」された状態。
今まで、「根絶」されたウイルス病は天然痘のみ。


ただし、口蹄疫と並ぶOIEリストAの牛の海外悪性伝染病である牛疫は、2010年には、「根絶」される予定。
これについては、先の参照したサイト「霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第180回」が詳しい。


//しかしながら、本当にdisease freeというのであれば、
//この世界からFMDウイルスがなくなる事が必要です。


OIEにより、FMD freeと認定されるのは、国単位、あるいは、国の中にある一定地域
(FMD free zone)単位である。


OIE参加国の清浄国、非清浄国 区分けリスト:


http://www.oie.int/eng/Status/FMD/en_fmd_free.htm


例えば、オーストラリアとアメリカ合衆国は、FMD free(口蹄疫清浄)国、
アルゼンチンはFMD非清浄国であるが、国の中には、FMDワクチンを接種していないFMD free zoneがある。
決して、地球全体を指してFMD freeといっているわけではない。
このため、ある国、地域をFMD freeと認定することに、この世界からFMDウイルスがなくなることは必要ではない。
あまりにも、論理が飛躍しすぎだ。


また、もりりんはこんなこともTweetしている。


「牛のcarrierは15から50%。となれば、清浄国(FMD free)という概念自体が存在するはずがない。」


http://twitter.com/kimuramoriyo/status/15928354398


もりりんは、どうやら、清浄国の牛豚に15〜50%のキャリアが存在すると考えているらしい。
元気な牛豚の中に、FMDウイルスに感染した個体が存在すると。


これは間違っていて、以下の2点から、FMDウイルスに感染した個体は摘発される。


(1)
清浄国はFMDワクチン未接種なので、家畜がFMDウイルスに感染すると発症することにより侵入がわかる。
なお、FMDウイルス株によっては、ある特定の家畜で不顕性感染をすることがある(例:台湾のイエローキャトル)が、その強い伝染性力により、結局は、別の畜種(豚など)に感染し発症することにより侵入が判明する。


(2)
発症しても農家が隠したらどうするのという意見もあるだろうが、他の農場へも感染はすぐ広がる。
また、清浄国認定の条件のひとつに、「FMD発症家畜の早期摘発体制が整備されている」という点がある。日本なら、畜主→臨床獣医師家畜保健衛生所(全国に200カ所近くある)→動物衛生研究所という体制が整備されている。


なお、もりりんのいう「牛のcarrierは15から50%」という報告は見たことがない。


Twitterでも彼女の発言に対してソースを出せという指摘が複数の方から寄せられていたが、これに対するもりりんの返事はなしであった。
もりりんの妄想か思いこみ、あるいは恣意的発言であろう。
(>もりりん ソースがあればコメント、お待ちしております。)
この時に限らず、もりりんって矛盾があったり非論理的だった発言に対してTwitterで指摘されても回答しないのだよね。


//それでは、ウイルスを根絶するためには
//どうしたらよいでしょうか。
//ウイルスに特効薬はありませんから、
//治療薬で退治することは不可能です。
//となれば、感染経路を遮断する以外にはありません。



//それでは、ウイルスを根絶するためには
//どうしたらよいでしょうか。


先に述べたように、FMDウイルスをある国、地域から(「排除」)「撲滅」することは可能。
しかし、地球上から「根絶」することは、現在、できていない。


これは、FMDウイルスの以下の性質による。
(1)宿主域が広い
(2)感染個体がキャリアとなる
(3)ウイルスのタイプ、サブタイプが多岐にわたり、全ての株に対して有効なワクチンが存在しないこと


ヒトの天然痘と牛の牛疫は、上の3つの問題がなかったため、撲滅→根絶が容易であった。


以下は、現時点では「根絶」することはできないので、「撲滅」と読み替える。


//ウイルスに特効薬はありませんから、
//治療薬で退治することは不可能です。
//となれば、感染経路を遮断する以外にはありません。


伝染病の発生には、「宿主」、「病原体」、「感染経路」の3要因が関与する。
撲滅するためには、3要因に対し、対策を実施する。
すなわち、感染経路を遮断する以外にもある。


「宿主」と「病原体」に対しては、殺処分・消毒により、ウイルス量を減らす・無くすこと、また、必要に応じて、リングワクチネーションを行うこと。


//感染経路を潰すには2つの条件があります。
//第1に感染経路が明らかであり、
//物理的に遮断できること。
//第2に有効な予防手段が存在することです。


//この条件を満たし、
//実際に地球上から根絶されたウイルス感染症天然痘です。
//ヒトの天然痘ウイルスは
//感染したヒトの口や鼻から排出されるウイルス、
//あるいは水疱が破れてかさぶたになった部分から
//まき散らされるウイルスを吸い込むことによってうつります。


//天然痘には、ほぼ100%効果的な予防方法である、
//天然痘ワクチンがあります。
//このため、天然痘患者を隔離し、
//患者の周りにいる人20人にワクチンを打つことによって、
//1980 年、天然痘患者はこの地球上から消えました。
//ポリオも感染経路が分かり、まだ根絶には至っていませんが、
//WHOの取り組み方が間違っていない限り
//近い将来根絶しうるウイルス感染症です。


//それではFMDはどうでしょうか。
//感染経路は明らかになっている中でも、多岐にわたります。
//同種の動物間だけでなく、
//他の動物、昆虫、水、風などです。
//動物には人間も含まれますから、
//これらの感染経路を全て遮断するためには
//人間までも殺しつくさなければなりません。
//たとえそうしたとしても、
//水や空気の流れを遮断することは不可能です。
//また、予防法についても、
//ワクチンを含む有効な手立てはありません。



先に述べた方法で、撲滅はできている。


//人間までも殺しつくさなければなりません。


ここまでいわれると、指摘する気もおきない。


//こうなると、FMD ウイルスを
//地球上から根絶することは無理だ
//と言うことがわかります。
//根絶できない以上、一度流行が収まっても、
//必ずまたやってきます。
//そのようなウイルスに対して、
//「FMD free」という概念は当てはまらないのです。



//こうなると、FMD ウイルスを
//地球上から根絶することは無理だ
//と言うことがわかります。


根絶は現時点では難しいが、撲滅は可能である。


//ここでもう一度、FMDがどういう病気か振り返ってみましょう。
//蹄が2つに割れている動物を襲う感染力の強い病気だが、
//多くの動物は治癒します。
//ヒトにうつることはなく、感染した肉を食べても問題ありません。
//流行が収まっても、
//またちょくちょくやってくる感染症であり、
//super killerでもないウイルスに対して、
//清浄国のお墨付きを与えること自体、
//理にかなったことではありません。


//流行が収まっても、
//またちょくちょくやってくる感染症であり、


この点だけは、同意する。
日本では、92年間発生がなかったのに、2000年に発生、10年後に再び発生した。


これは、以下の要因がある。
(1)感染力の強いOタイプが東南アジアを中心に広がった
(2)東南アジア地域で国間の人物の移動が盛んになった


今後は、鳥インフルエンザと同様に、常に厳重な警戒が必要だなあ。
(豚コレラアフリカ豚コレラも同様に。。。)


//清浄国のお墨付きを与えること自体、
//理にかなったことではありません。


FMDウイルスが侵入してくる可能性はあるが、FMDウイルスは存在しないことが確認された国、地域を清浄国とすることは理にかなったことですね。


//科学的根拠に基づかない、
//清浄国(FMD free)という概念は不適当だ、
//と声を上げるのは「和牛」という希有なブランドを生産する、
//我が国こそが先頭に立ってするべきことではないのでしょうか。



ここまでいうので、あれば、もりりん自ら、農林水産省へ乗り込んで、説得して欲しい。。。


最後に、興味深いサイトを紹介する。


南米の国、ウルグアイにおける口蹄疫制圧に至る取り組みを紹介されている。
口蹄疫非清浄国がなぜ、口蹄疫清浄国と認可されるように努力するのかがよくわかると思う。


口蹄疫を制圧した国の牛肉生産」

http://members.jcom.home.ne.jp/inoue-uru/uruguay/fmd_free.htm

木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.5―」に対する指摘

彼女の口蹄疫に関する前回の投稿(口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4- )の問題点については、このブログで既に指摘した。


木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」に対する指摘:


http://d.hatena.ne.jp/plecostomus1/20100602/1275491182


彼女の口蹄疫に関する一連のTweetとブログ投稿については、他にも、多くの方々がその問題点を指摘している。
このため、口蹄疫に関する発言をやめるかと思っていたが、相変わらず、おかしな事を書いている。
Twitterにおける彼女のフォローワーの中には、素直に彼女の意見を信じる人もいる。このため、再度、指摘する。


//→木村盛世氏の引用部分
☆→plecostomus1のコメント
口蹄疫→FMD


口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.5


http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/06/vol5.html


//FMD(口蹄疫)が広がりを見せています。
//今までFMDに関しては4つのブログ
//(口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.1〜vol.4- )
//を書いてきましたが、
//今一度FMDとはどういう病気かをまとめてみたいと思います。

//1. 蹄が2つ以上に割れている動物に罹る、感染力(他にうつす力)
// が強い感染症
//2.牛の成体の場合、死に至ることは殆ど無く、通常動物は2週間程
// 度で回復する(豚は牛よりも致死率高い)
//3.罹った動物の他、carrierと呼ばれる生物や風等、不特定多数に
// よって伝搬されるため封じ込め不可能
//4.人にうつったという報告はない
//5.感染した動物を食べても人には影響ない
//6.治療法はない
//7.ワクチンは 100%の効果無し



//罹った動物の他、carrierと呼ばれる生物


わかりにくい文章。
FMDウイルスに感染した動物の一部がキャリアになるのであって、キャリアと呼ばれる生物が存在するわけではない。


//人にうつったという報告はない


FMDに感染し発症している動物に濃厚に接触した場合、まれではあるが人に感染することはある。
ただし、人の臨床症状は軽度である。


以下のサイトが詳しい。


人獣共通感染症 第99回追加 口蹄疫は人に感染するか」:

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf99ad.htm


//治療法はない


FMDが発生しておらず、FMDワクチンを接種していない国(FMD清浄国)では、FMDが発生した場合、FMDウイルスの感染拡大を防ぐため、そもそも治療するという選択肢はなく、殺処分する。


//感染経路は多岐にわたるため、
//「封じ込めは不可能」ですから、
//ニュースにある「これじゃ無理だ。感染は防げない」は
//当然のことなのです。
//どれくらい広がるかはウイルスに聞いてみないと分かりませんし、
//10年前のウイルスと今回のFMDウイルスは全く同一ではありませんから、
//広がり方も違ってくるのは致し方ないことです。



//「封じ込めは不可能」


以下のサイトに2004年に世界におけるFMDの発生状況を示した地図がある。

https://www.llnl.gov/str/May06/Lenhoff.html


茶色→2004年にFMD発生があった国
緑色→FMD発生がなかった国
紫色→FMDの発生状況が把握できていない国


地図で緑色で塗られた国々は、FMDの侵入を封じ込めている国である。
これらのFMD清浄国は、北米、オーストラリア、ヨーロッパ等の先進国が多い。
また、FMD非清浄国は、発展途上国が多い。


日本も1908年から2000年までの92年間は清浄国であった。また、2000年3月に宮崎県でFMDが発生したが、同年9月にOIEに認められて清浄国に復帰したため、2000年9月から2010年3月までの10年間も清浄国であった。
すなわち、1908年から2010年までの102年間の中で、FMDの侵入を許したのは二回だけで、これら以外は侵入されていない。


つまり、封じ込めは不可能な疾病ではない。


//しかし、広がったからといって、
//多くの動物は回復し、
//感染した肉を食べたところで人には影響ないのです。
//これは農水省のHPにも書かれています。



//多くの動物は回復し、
//感染した肉を食べたところで人には影響ないのです。


木村盛世氏の示す農水省のHPをみると、「人が牛肉や豚肉を食べたり、牛乳を飲んだりしても口蹄疫にかかることはありません」とはかかれているが、「広がったからといって、多くの動物は回復する」とはかかれていない。


農水省のHP:

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/index.html


また、成牛・成豚の多くは回復するが、乳牛では泌乳量の低下、二次感染による乳房炎の発生により、肉牛・肉豚では発育遅延による肥育期間延長により、また、子牛、子豚では高確率で死亡するため、産業動物としての価値が大きく損なわれる。


これに関しては、私の先のエントリーに記載してある。


木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」に対する指摘:

http://d.hatena.ne.jp/plecostomus1/20100602/1275491182


また、木村盛世氏の言う通り、口蹄疫感染を野放しにした場合の経済的損失については、honeyB_Bさんが具体的な試算をわかりやすく提示されている。


厚生労働省木村盛世医務技官が言うとおりに口蹄疫と共存した場合の簡単な試算:

http://togetter.com/li/26478


//2001年にイギリスでFMD大流行が起こりました。
//その際のBBCニュースには多くの人の意見が挙げられています。
//パニックを起こした英国政府とは裏腹に、
//多くの視聴者の声は、的を得ています。



BBCニュースに対する人々の意見として、100以上のコメントが記載されている。


BBCニュースに対する人々の意見:

http://news.bbc.co.uk/2/hi/talking_point/1227938.stm


「パニックを起こした英国政府とは裏腹に、多くの視聴者の声は、的を得ています」とかかれているので、60個まで読んでみた。
その結果、専門家としての意見は2つだけ(獣医師であると述べている)、残り58個は、氏名のみ記載された一般視聴者による投稿であった。
その内容は、木村盛世氏の書き方では、人々の意見の多くが、殺処分に対する疑問や反対意見かのようにかかれているが、そんなことはない。殺処分を支持する意見もある。更に、殺処分に対する意見の多くは、殺処分のみではなく、ワクチン接種をやれという意見であった。
ワクチン接種には、今回の宮崎県のようにリングワクチネーションを実施しろという意見と、常時ワクチン接種をしろという意見があった。なお、常時ワクチン接種を実施した場合の問題点については、以下に記載してある。


井上晃宏氏(医師)のブログエントリー「口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的である」に対する指摘:

http://d.hatena.ne.jp/plecostomus1/20100604/1275676613


//「人にうつらないし、食べても安全。
//殆どの動物は病気から回復すると言うのに、
//なぜ殺す必要があるのか」



殺処分する理由は、先のエントリーで示したので割愛。


//「1940年代まではFMDにかかっても治るまで放置してきた。
//それが殺処分するという政策転換をし、
//他のヨーロッパ諸国も同様の政策をとるよう説き伏せた」



FMDワクチンの大量生産が可能になったのは、1951年。それまでは、大量生産できなかった。
このため、治るまで放置してきたのではなく、放置せざるを得なかっただけである。


口蹄疫のワクチンの歴史は以下のサイトが詳しい。


人獣共通感染症 第116回追加 口蹄疫との共生>3.ワクチンの開発:

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf116.htm


//「感染源はたくさんある。
//全ての家畜を殺し、トリや昆虫を殺し、
//はたまた人間をも殺すまで殺し続けるのか」

//「埋められずに放置された家畜の肉をカラスなどがついばみ、
//感染を広げているではないか」

//「経済損失の大きさを考えているのか」

//ケニアの獣医師のコメントは冷静です。
//「ケニアではFMDはごくありふれた病気だ。
//イギリスの対応は大げさすぎる」



ケニアの獣医師さんが「ケニアではFMDはごくありふれた病気だ。」とコメントするのは、当たり前だ。ケニアは、非清浄国、つまり、FMDウイルス常在国なのだから。


FMDウイルス常在国の獣医師からみれば、そりゃあ、「イギリスの対応は大げさすぎる」と思うかもしれない。しかし、清浄国では、FMDウイルス根絶のため、殺処分が必要。


更に、ケニアの獣医師さんのコメントには、続きがある。
「検疫とワクチン接種と消毒を実施すれば、この病気の感染拡大を防止できる」とコメントしている。
木村盛世氏の主張する、「発症している牛や豚はそのうち回復するから殺処分しなくてもよい」などという対応とは違うのだ。


//今、日本のニュースで流れてくるのは
//「なぜ防げなかったのか」「人災だ」といったものばかりです。
//しかし9年前に多くの議論がされているのですから、
//なぜ日本のメディアはこうした番組を作ってゆかないのか不思議です。



//しかし9年前に多くの議論がされているのですから、


9年前、つまり2001年のイギリスにおけるFMD発生時に「多くの議論」がされたにもかかわらず、2007年のイギリスにおけるFMD発生時も、FMDコントロールには殺処分が実施されている。
すなわち、木村盛世氏の言う「多くの議論」は、その後の方針に影響を与えなかったわけだ。


ウィキペディア口蹄疫>事例

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A3%E8%B9%84%E7%96%AB


実りのある「議論」であれば、殺処分の見直しがあるだろうに、そうはならなかった。
「多くの議論」は、「殺処分はかわいそう」といった海外悪性伝染病についての知識が十分でない人々による感情的反発が大きい。
また、今回の木村盛世氏の一連のFMDに関するTweetに代表される、世間に影響力があるのに、無知、あるいは、指摘されても理解する能力のない知識人による扇動があったのかもしれない。


//なぜ日本のメディアはこうした番組を作ってゆかないのか不思議です。


最大の畜産地域である都城市口蹄疫が飛び火して、大変な事態になっている現在、「FMDの殺処分は必要ない」などという世間の混乱を招く番組を作るメディアが存在すると考える、その思考パターンが不思議です。


//メディアだけでなく、
//研究者からも多量殺処分に関する否定的な報告も出ていますが、 ※1)※2)
//日本では殺処分が有効、と言ったものばかりですから、
//違和感があります。



清浄国におけるFMD発生時の殺処分という対策は、OIEの定めたFMDコントロールの大原則。日本だけがやっているわけではない。
「研究者からも多量殺処分に関する否定的な報告」もあるかもしれないが、主流ではない。


また、引用文献がふたつ記載されている。残念ながら、これらの文献は全文公開されていない。


しかしながら、公開されている要約を読んだ限り、「多量殺処分に関する否定的な報告」とは思えないのだ。
(ただし、これについては、全文を読めないので確定できてない。読める方、教えてくださいね。)


参考文献=※1)

The foot-and-mouth disease epidemic in Dumfries and Galloway, 2001. 2: Serosurveillance, and efficiency and effectiveness of control procedures after the national ban on animal movements

http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/content/abstract/156/9/269


参考文献=※2)

Relationship of speed of slaughter on infected premises and intensity of culling of other premises to the rate of spread of the foot-and-mouth disease epidemic in Great Britain, 2001

http://veterinaryrecord.bvapublications.com/cgi/content/abstract/155/10/287


//イギリスでの多量殺処分の結果、
//経済損失は1兆6 千億円程度と言われています。
//日本の牛は国際的ブランドですから、
//被害の程度はこれ以上になる可能性もあります。



木村盛世氏のいうとおり、殺処分をやめてしまえば、国内全域で飼養されている牛や豚にまたたくまに感染が拡大し、口蹄疫被害の程度は、確実にイギリスにおける2001年の損失以上になるだろう。

 
//今回流行しているのは突然変異を起こして、
//人間にも感染するsuper killer ウイルスではありません。



相変わらず、人に感染するかどうかを問題にしている。
FMDで問題になるのは畜産動物としての価値がなくなること。


//そうであれば、多くの経済損失とともに農家の負担、
//獣医師や担当者の疲弊を生み、
//文化的価値も大きい種牛を失いながらも、
//効果があるかどうか分からない多量殺処分をする意味は
//全くないと思います。



効果があるかどうか分からないのは、殺処分をしないでそのままにしておくとい選択肢の方。


//動物の感染症として恐れられる感染症として
//H5N1トリインフルエンザがあります。
//このウイルスはヒトにも感染すると言うことで、
//WHOが最も恐れている病気の一つです。
//現在499人の症例がありうち 295人が亡くなっています
//(致死率約60%ですからこちらはsuper killer ウイルスといえます)。


//繰り返しますが、FMD流行の歴史の中で、
//ヒトが罹って死んだという確定例はありません。



//ヒトが罹って死んだという確定例はありません。


また、人への感染性を問題にしている。
結局、「FMDに感染すると産業動物としての価値がなくなる」という最大の問題点を木村盛世氏は理解できないのだろう。


//今のままゆけば、H1N1豚インフルエンザに続く
//「政府が生んだパニック=人災」になってしまいます。
//今日本がすることは、殺処分をやめ、
//世界に向けて「不必要な殺処分対策をやめる」よう訴えることでしょう。



口蹄疫が続発している現在、「日本が、殺処分をやめ、世界に向けて「不必要な殺処分対策をやめる」よう訴え」たりすれば、日本は世界の笑い者になるだろう。

井上晃宏氏(医師)のブログエントリー「口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的である」に対する指摘

新聞をやめて半年ほどになる。ネットでしかニュースを読まなくなったためだ。
新聞紙が山積みになることもないし、新聞代も払わないでよい。
ネットでニュースを読むのは便利なのだが、ネットで読むニュースは要約が主体で、じっくりと読むには物足りない。


BLOGOSという識者がネットに書いたコラムをまとめて載せているサイトがある。

http://blogos.livedoor.com/


ネットのニュースでは物足りない気持ちを満足させてくれる、新聞における特集記事や社説のようなコラムがあるサイトかもしれないと、読み出していたのだが、先日、ひどいコラムを見つけた。それは、木村盛世氏のブログに匹敵する香ばしい内容であった。


口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的である 井上晃宏(医師)」

http://news.livedoor.com/article/detail/4797913/
http://agora-web.jp/archives/1023695.html


BLOGOSなんていうもっともらしいサイトに掲載されいるので、信じてしまう人もいるかもしれない。
それでは困るので、おかしい点を指摘してみた。


なお、6月4日のBLOGOSに、井上晃宏氏に続いて、かの木村盛世氏のブログ「口蹄疫問題を考える—危機管理の立場から—vol.4—」もエントリーされている。

http://news.livedoor.com/article/detail/4808744/


さらに、井上晃宏氏と近い意見である堀江貴文氏のコラムもエントリーされている。

口蹄疫のこと」

http://news.livedoor.com/article/detail/4788166/


口蹄疫のワクチン接種をすすめるこれらのコラムを記載したBLOGOSの編集部は、明らかに意図してやっているのだろう。


さて、指摘してみる。(またもや、誤字脱字悪文、ごめんなさい。)


口蹄疫殺処分は、食肉輸入の非関税障壁を維持することが目的である 井上晃宏(医師)」


>関係者には周知の事実だが、マスコミの不勉強のために報道され
>ない事実がある。

>口蹄疫ワクチンが存在するのに、接種されず、殺処分ばかりやっているの
>は、非関税障壁を維持したい畜産業界と、それに結託した(自民党時代の)
>農林水産行政のせいである。もちろん、赤松農林水産大臣とも、民主党政権
>とも関係がない。



口蹄疫清浄国において、口蹄疫が発生していない平常時に口蹄疫ワクチンが接種されることはない。
清浄国におけるワクチン接種は緊急時のみであり、それは、今回の宮崎県における発生で実施したように感染が拡大した場合にその拡大を抑制するために、感染地域の周辺にリング状に接種する場合に限られる。

井上晃宏氏は、「口蹄疫ワクチンが存在するのに、接種されず殺処分ばかりやっている」と述べているが、投稿された5月30日の時点で緊急ワクチン接種は実施されている。
このため、井上晃宏氏がいうワクチン接種とは日本国内において平常時に口蹄疫ワクチンを接種してこなかったのが問題と考えているらしい。

それでは、国内で口蹄疫ワクチンを接種してこなかった理由は何か。

そもそも口蹄疫国際獣疫事務局(OIE)が最も重要な家畜伝染病(リストA疾病)とするほどの強い感染性を持ち、産業動物としての家畜の価値を無に帰すような恐ろしい疾病である。
今回の宮崎県の例でわかるように清浄国に一旦進入すると大変な被害が発生する。
このため、OIEでそのコントロール方法が定められている。
その方法は、口蹄疫清浄国においては、感染家畜やその同居、疫学的関連家畜の殺処分がまず第一の方法である。「殺処分ばかりやっている」のは、口蹄疫の感染拡大に対し、この方法が最も効果的であるからだ。
ワクチンの使用は、先に述べたように、感染拡大防止のため発生地域周囲にリング状にワクチンを接種するというように限定されている。

ワクチンを積極的に使用しないのには、以下の理由がある。

(1)ワクチン接種により家畜が獲得する抗体と、口蹄疫ウイルスに感染して家畜が獲得する抗体との区別できない。すなわち、家畜が口蹄疫ワクチンを接種していると、その国が口蹄疫清浄国か非清浄国かの区別ができなくなる。
(2)接種すると口蹄疫の発症はおさえられるが感染は完全におさえられないため、見た目は元気であるが新たな感染源となる動物(キャリアー)がでてくる。
家畜だけではなく、野生動物にも感染を広げる可能性がある。
(3)口蹄疫非清浄国の中国、台湾や南米の国では自国でワクチンを生産しているが、清浄国であった日本は口蹄疫ワクチンを国内で生産していない。ヨーロッパから購入して備蓄している。この備蓄も、あくまで口蹄疫発生時の緊急使用用の備蓄である。
口蹄疫清浄国で常時全頭接種したいからワクチンをもっと欲しいと要求しても、口蹄疫発生時の緊急用のワクチンをそんなことに使えるか馬鹿野郎と言われるだろう。
(4)ワクチン接種には手間がかかる。人間のように簡単に集団接種できない。注射打つからねといっても家畜はじっとしてくれない。保定が大変なのだ。
また、現在のワクチンは効力が持続するのが6ヶ月で、常時接種するとなると一年に二回接種が必要となる。母豚なんて、年間20匹以上、子豚を生むんだよ。
(5)FMDウイルスには7つのタイプがあって、たとえば、今回の宮崎県のOタイプウイルスにはOタイプ用ワクチンしかきかない。Oタイプ用ワクチンを打っていても別のタイプのウイルスが進入したら感染発症する。


というわけで、「口蹄疫ワクチンが存在するのに、接種されず、殺処分ばかりやっているのは、非関税障壁を維持したい畜産業界と、それに結託した(自民党時代の)農林水産行政のせい」などという低いレベルの話ではないのだ。


>さて、ここで皆さんにうれしいニュースをお知らせいたします。それは6
>月9日の北海道での終息宣言から3ケ月が経過したわけですが、その間新た
>な発生がなく、また今回の発生時には蔓延防止のためのワクチンを使いませ
>んでした。そこで、畜産局衛生課は国際獣疫事務局(OIE)に対して日本
>における口蹄疫清浄化復帰を宣言し、日本時間の昨晩(9月26日)OIE
>の口蹄疫委員会からもその認定をかちとることができたとのことです。発生
>以来半年といった短期間での清浄化が達成できました。これは世界的にみて
>も快挙であり、オリンピックならさしずめ金メダルといえるでしょう。わが
>家畜衛生関係者にとって誇るべき防疫活動の結果を皆さんに報告し、喜びを
>分かち合いたいと思います。

> 平成12年9月27日
> 家畜衛生試験場長 寺門誠致


>10年前の文章である。「ワクチンを使いませんでした」という言葉に着目
>してもらいたい。素人には何のことだかわからないだろう。大抵の伝染病と
>同じように、口蹄疫もまた、ワクチンを使った方が、安いコストで蔓延を防
>げることは明白だからだ。



この方は素人だから、何もわからなかったのだろう。
先に示したように、平常時に口蹄疫ワクチンを接種することは、コストを論ずる以前に問題があるのだ。


>「清浄化」という言葉もある。これも、素人にはよくわからない言葉であ
>る。単に口蹄疫が発生していないという意味ではない。「新たな発生がない
>上、ワクチン接種すらしていない」という意味を含むのである。
>なぜ、ワクチン接種の有無が問題になるのか。「清浄国」なら、「清浄国
>」に対して食肉を輸出できるばかりか、「汚染国」からの食肉輸入を禁止で
>きるからである。



先に記したように清浄国において、ワクチン接種をしていないのは、まず、口蹄疫ウイルスを広めない、撲滅するためという理由がある。
なお、これが結果的には、清浄国にとって非清浄国に対する非関税障壁となる。
ただしやはりこれは二次的なもので、真の目的は口蹄疫ウイルスを撲滅すること。


>輸出入の差額から考えれば、明らかに、後者の目的が主である。ところが、
>報道では「和牛の輸出ができなくなる」という話ばかりだ。
 
>結局、一連の口蹄疫騒動は、非関税障壁を維持するために、ワクチンをあ
>えて使わなかった畜産業者と農林水産行政当局とが、自分で招き寄せた災害
>なのだ。
 


ワクチンを使わない理由が井上晃宏氏が主張する低いレベルの話ではないことは示したとおり。
畜産業者と農林水産行政当局に、ワクチンを使う使わないなどという選択肢はない。使えないのだ。


>私は、口蹄疫という病気による被害よりも、この非関税障壁が撤廃される
>ことによる、食肉価格の値下がりの損害の方が大きいんじゃないかと思う。



今回の宮崎県ではワクチンを使用してしまったので、清浄国への復帰はしばらく時間がかかるだろう。
正直なところ、復帰までの間に、非清浄国から食肉輸入がどうなるかは私にはわからない。
ただし、あくまで、日本の一部地域で口蹄疫が発生しているだけで、他地域は清浄であること、これまで清浄国であったことから、全面的に輸入が解禁されて非清浄国から食肉がはいってくるとは考えにくい。
このため、食肉価格が値下がりすることはないと思う。


>しかし、食肉価格の値下がりは、生産者にとっては損失となるが、消費者
>にとっては利益となる。日本が、口蹄疫「汚染国」になったことは、必ずし
>も悪いことではない。



日本が清浄国へ復帰するまでの間に、非清浄国から安い輸入肉がはいってきて食肉価格が下がるかどうかは上に記したように現時点では不明。
また、口蹄疫ウイルスを平常時から国内の家畜に全頭接種するという選択肢は先に記した理由でない。
このため、日本が非清浄国になって、発展途上国が大部分である非清浄国から、安い輸入肉がはいってくる可能性もない。
また、宮崎県の例でわかるように、口蹄疫発生は多大な被害をもたらす。
国民にとって悪いことである。


>(補足) 豚コレラも、ほぼ同じ状況である。



コレラは、強い伝染力と高い致死率を特徴とする敗血症型の豚のウイルス性疾病である。口蹄疫と同様にOIEのリストA疾病である。アメリカとイギリスは20世紀中に清浄化が宣言されている。日本は、2006年にこれまで接種していた豚コレラワクチン接種を中止し、豚コレラ清浄国になっている。
つまり、口蹄疫と同じで、国内で発生がないこととワクチンを接種していないことが清浄国の条件となっている。


>(補足2) 口蹄疫ワクチンが使用できない理由は、有効性が低いからでは
>なく、畜産業保護のためである。



口蹄疫ワクチンが国内で平常時に使用できない理由は、ワクチンの使用により感染家畜の摘発が困難になる等様々な問題があるためである。
なお、口蹄疫発生がなく、ワクチン接種していなければ、清浄国となり、結果的には、国内の畜産業の保護にはつながるという側面はある。

木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」に対する指摘

木村盛世氏の口蹄疫に関するブログエントリーがあまりにもひどい。


彼女のフォローワーをみていると、市民運動家の方など、善良な方が多い。
そういった方々が、素直に彼女の発言を信じ込むと危険だと思って、指摘してみた。
とりあえず、ざっと書き上げたので、誤字脱字悪文状態であるが、アップしてみる。


木村盛世氏のブログ
http://kimuramoriyo.blogspot.com/

木村盛世氏のtwitter
http://twitter.com/kimuramoriyo


以下は、
木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」
の引用およびplecostomus1のコメント。


>→木村盛世氏の引用部分

☆→plecostomus1のコメント


>口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―
>
> 宮崎県で家畜への口蹄(こうてい)疫感染が拡大している問題で、
>消費者庁は17日、食品業界や流通業界などに対し、販売の際に
>非感染を売り文句にするなど、消費者に誤解を与える不適切な表
>示を慎むよう要請した。
> 同庁などによると、口蹄疫にかかった家畜の肉や牛乳は市場に
>出回っておらず、また摂取しても人体に影響はない。しかし問
>題発生後、量販店やインターネット上で、「宮崎県産は使用し
>ていません」「口蹄疫の恐れのない産地の肉です」などの表現
>で食肉や加工品を販売している例が数例確認されたという。
>(2010/05/18-01:50) 時事ドットコム

>この記事をみて皆さん、どう思われますか。
>明らかに、宮崎県と言うだけで避けられる、
>というstigmatizationが生じています。



なぜか突然、難しい単語が登場。
stigmatizationの意味は、「汚名{おめい}を着せること、非難{ひなん}すること」
らしい。


>これは当初から私が恐れていた事態です。
>なぜこんなことが起こるのでしょうか?
>それはFMDという病気は家畜が感染したらとんでもないことにな
>る恐ろしい病気、という概念にとどまらず、
>人体にも悪影響をおよぼし、
>食べたら感染して死んでしまう、
>という誤った認識が広がり、
>日本中が不安と恐れの真っただ中にいるせい
>ではないでしょうか。



消費者庁によると、問題があった件数は数例が確認されただけ。
これは、2001年9月のBSE騒動のときよりはるかに少ないと思う。
実際に、国内初のBSE発生時の2001年9月直後に、新聞記事数は激増し、牛肉消費量は半分以下に激減している。


http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/irwg8/6321hortresearch.pdf


今回の宮崎県における口蹄疫発生に伴う牛肉消費量の変動についてはよい記事がみつからなかったのだが、下記の新聞報道によるとそれほど大きな変動はない。


http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=8945146&newsMode=article


このため、「日本中が不安と恐れの真っただ中にいる」ということはなくて、大部分の国民は冷静に行動していると思う。
私の周囲でも、BSE騒動のときのような、牛肉は食べないという人々の反応や、焼き肉店が焼き鳥店に変わっていたという情報も聞かない。


>それでは、FMDとはどんな病気なのでしょうか。
>それはFMDウイルスによって生じる動物の感染症で、
>蹄が2つ以上に割れている動物が罹ります。
>代表例として、牛、豚、羊等があります。
>感染力(他の個体に広げる力)は強いのですが、
>成体では死にいたる確率は5%以下です。
>症状は口や蹄の付け根などにできるぶつぶつ(水疱)と熱な
>どです。
>大体1〜2週間で回復します。



詳しく説明すると、死に至る確率が5%なのは成豚の場合。
以下の総説が詳しい。木村盛世氏もFMDに関する知識がないままTweettwitterでたたかれたため、反省してこの総説で勉強したのだろう。


口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について(村上洋介)


http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/japan/murakami.html


牛の死亡率は調査中。
なお、成牛や成豚における死亡率は低いが、FMDに感染すると産業動物としての価値を失う。これが、FMDが恐れられる最大の理由である。
木村盛世氏のブログのエントリーには、この認識が欠けているのが最大の問題点。


なお、AVISという世界の獣医師がFMDについて学習するサイトに、FMDの感染による症状が簡潔にまとめられているので、紹介する。


AVIS:
http://www.aleffgroup.com/avisfmd/index.asp


AVIS>Foot and mouth disease
http://www.aleffgroup.com/avisfmd/A010-fmd/mod4/4200-strat.html


乳用牛の場合:
乳腺上皮の感染により、直ちに50〜60%の乳量減少を起こす。
これは、泌乳期中もずっと続く。この結果、1頭の総乳生産量の25%が減少する。
更に、乳房が細菌による二次感染や乳房炎を起こす。この結果、乳産生能力の一部、あるいは全てが失われることになる。このため、しばしば早くと畜されることになる。


肉牛、肉豚の場合:
乳用牛に対するよりも、肉牛、肉豚に対するFMDの影響はより大きく、増体率の低下を招く。肉牛では成熟するまで更に10〜20%の肥育期間延長がある。
肉豚では成長が1〜2ヶ月遅くなる。イギリスのデータではFMDにより年間20%の肉生産の減少が報告されている。


子牛、子豚の場合:
死亡率は50%に達す。感染拡大時の子羊や子豚では100%に達する場合もある。
また、感染した母豚、母牛の乳房に病変が形成された結果、子牛子豚が母畜の乳を吸えなくなるという影響もある。


>人に対する影響ですが、人に感染することは極めて稀で、
>感染した動物の肉を食べてFMDに罹ることはありません。

>え?そうなの?と
>意外に思われる方もいらっしゃるでしょうが、
>これらの情報は「口蹄疫問題を考えるvol.1」に全部書いてあります。



繰り返すが、成体では死に至る確率は確かに低いが、先に記したようにFMDに家畜が感染すると、産業動物として成り立たなくなる。
木村盛世氏には常にFMDが産業動物の疾病であるという認識がかけている。
自分のフィールドから、人に対する感染性という観点からしかFMDについて
考えていない。
なお、口蹄疫に関する情報を得るのに、氏のブログで「口蹄疫問題を考えるvol.1」をまずみる人はいないだろう。


>FMDは症状をみると人間の手足口病によく似ています。
>また感染力と致死率ということに関しては、
>はしか(麻疹)と比較できる病気でしょう。
>麻疹は麻疹後脳炎など重篤な後遺症が残る可能性がありますから、
>重症度に関しては麻疹の方が高いでしょう。
>FMDの後遺症としては、
>乳が出にくい、肉質が落ちる、等がいわれています。
>しかし、麻疹は有効なワクチンがありますから
>予防可能という意味ではFMDと違います。



また、人の疾病と対比してFMDを論じている。


>このようなFMDに対して
>必要以上に過敏になっている私たちは
>既にパニック状態になっているのです。



先に記したように、宮崎県産の畜産物を含めて、国内で牛肉や豚肉の
消費の著しい減少はおきていない。
このため、大部分の国民はFMDに対して過敏になっておらず冷静に行動している。
もちろん、パニックにもなっているない。事実誤認である。
あるいは、パニックにさせたいのか。


>それではFMDの広がりを
>どうやって抑えたらよいのでしょうか。
>というよりもFMDを封じ込めることは出来るのでしょうか。
>残念ながら封じ込めは不可能に近い感染症の一つだといえるでしょう。
>まず、潜伏期があり、症状がないうちから感染させることがあります。
>治療法はなく、予防に使われるワクチンは
>100%の効果はありません。
>となれば、FMDは封じ込め不可能な病気と言わざるをえません。



FMDはOIEのリストA疾病という恐ろしい病気だが、決して封じ込め不可能な病気ではない。
現に、オーストラリア、アメリカをはじめとする先進国の多くは、FMD清浄国である。
FMD非清浄国の多くは、発展途上国である。
清浄国か非清浄国かの区別は、FMD発生状況およびFMDワクチンの接種状況によって決まる。


以下のOIEのHPに、OIE参加各国のどこが清浄国か非清浄国が記載されている。
(ただし、日本を含め一部アップデートされていない)


http://www.oie.int/eng/status/FMD/en_fmd_free.htm


ちなみに、最初の表に記載されているのが、清浄国でワクチン使用していない国。
次に清浄国であったが、現在、ワクチン使用中の国(現在の日本が該当する)。
以下は非清浄国。


どの国も清浄国になるために努力してる。
非清浄国になってもいいなんていう国はどこにもない。


>封じ込め不可能な病気の対策の基本は、
>「入ったら広がる」ことを前提に、被害を最小限に抑えることです。



繰り返すが、FMDは封じ込め不可能な病気ではない。


>我が国のFMD対策は、「疑わしきは殺す」
>というイギリス流のやり方です。



殺処分をはじめたのはイギリスであったが、1957年以後、OIEが定めた口蹄疫予防のための国際条約で規定された方法になっている。
つまり、世界標準のやり方。


>しかし、これはどれだけ効果があるかは
>議論の分かれるところです(「口蹄疫問題を考える vol.2」参照)。
>FMDの感染源は病気に罹った動物以外にも
>carrierと呼ばれる生物です。



正確には、
FMDの感染源は、病気に罹った動物以外に、以下が感染源となりうる。


・FMDウイルスに汚染された肉・畜産物(乳等)・厨芥(人の食べ残し)
・風による伝播・渡り鳥
・FMDウイルスを保持している家畜の輸入・移動
・汚染資材,器具,人
・野生動物


また、牛,羊,山羊,水牛,シカなどの反芻獣では、FMDに感染し回復した
後も、FMDウイルスを体内に保持し、新たな感染源となりうるキャリアーとなる。


>人間等FMDに罹る動物以外も
>carrierになる可能性があると言われています。
>このため、感染した肉を食べると危険だ!
>というメッセージが出てしまうのでしょう。



正確には、
キャリアになるのは、牛,羊,山羊,水牛,シカなどの反芻獣で、豚は、キャリアーにならない。


>このような過敏反応は、
>かつて緒方洪庵天然痘ワクチンを打ち始めたころ、
>「(ワクチンを)打たれると牛になってしまう」
>という風評被害が立ったことと似ています。
>それはワクチンが牛の天然痘から作られたからですが、
>当然牛になってしまうわけではありません。



重ねて言うが、現在、国内における過敏反応はほとんどない。
このため、天然痘ワクチンのエピソードは関係ない。


>FMDは動物の間ではごくありふれた感染症です。
>実際、日本や韓国、中国以外にもブラジルで発生していますし、
>ネパールにも疑い例が報告されています。



ブラジルはFMD非清浄国で、FMDウイルスが存在している。
ネパールの現状は不明。
中国は、正確な情報を表に出さないため詳細は不明だが、常在国と考えられる。
これに対し、日本や韓国は現在は発生しているが、FMDVが常在している国ではない。
先に記したように、先進国の多くがFMDVが存在しない清浄国であり、これらの国では、FMDVはごくありふれた感染症などではない。
木村盛世氏には、FMD清浄国、非清浄国という認識がそもそもないようである。


>病気に罹った動物の他に
>carrierが感染源となることは前にも書きましたが、
>牛や豚の集団でも15〜50%のcarrierが存在すると
>報告されています。



正確には、牛はキャリアーになるが、豚はキャリアーにならない。


>となればFMDは何時、どんな所で起こっても
>不思議ではないのです。
>それ故、清浄国(FMDfree)という概念自体がおかしいのです。



OIEにより、FMDは清浄国と非清浄国に区分されている。
清浄国FMDfreeという概念は、OIEにおけるFMDコントロールの基本概念。
それ故、「清浄国(FMDfree)という概念自体がおかしいのです」という
人自体が、おかしいと考えられる。


>今のままの政策を続けてゆけば、
>「抑え込み可能の危険な病気」という「空気」を信じている国民は、
>不安がいらだちと怒りに変わり、
>政府や地方自治体を非難し始めます。
>しかしそうしたところで誰も救われないのです。
>最後には多大なる被害と、憎しみだけが残ります。



FMDに対する現在の国民的認識は、「抑え込みが難しいが、人には感染しないため人にとっては危険な病気ではない」という状態だろう。

また、川南町、都農町を中心に続発しているが、これは、FMDVを爆発的に排出するFMDVの増幅動物である豚が感染し、畜産農家が密集している地域で感染が拡大したためであって、これら以外の地域への感染拡大は、現在、関係者の努力により封じ込められてる。


木村盛世氏のいう「今のままの政策」とは全頭殺処分を指していると考えられるが、現在、政府や地方自治体への非難は、政府の初動対策並びに被害を受けた農場に対する支援の遅れに対してであって、殺処分という防疫手段自体に対する非難は、多くはないと思われる。
むしろ、木村盛世氏のように影響力があるにもかかわらず中途半端な知識により無責任な発言をブログやTwitterで行うことの方が問題が多いと思う。


>この負の連鎖を断ち切るには発想の転換が必要です。
>発生してから今までの経過をみれば、
>今回のウイルスが突然変異を起こした
>supper killerウイルスではありません。
>となれば、FMDに感染しても危険はないのですから、
>殺すこともやめて、通常の正肉として販売すれば良いのです。



「supper killerウイルス」→「super killerウイルス」ね。
ここで、論理の飛躍。
木村盛世氏が言う「FMDに感染しても危険がない」のは、人間に対して言っているのだろうが、牛豚や他の偶蹄類にとって多大なる危険がある。


>感染した肉がさらなる感染経路になるのではないか、
>という人もいますが、
>蔓延した状況では不特定多数の感染経路が様々に絡み合って、
>どれか一つを遮断してもあまり意味がありません。



まず、蔓延していない。宮崎県の川南町、都農町を中心を中心とした一部地域におさまっている。また、宮崎県外では発生していない。


FMDに感染した牛豚の肉を市販した場合の危険性を考えてみた。

・食肉処理場への輸送経路の汚染
・食肉処理場内の汚染
・精肉として出荷された流通経路の汚染
・これら経路で働く人々の汚染

以上の経路を介してFMDVが全国の使用されている牛や豚の飼養農家へ進入、
また、小売り店から人を介した家庭で飼養されているミニブタ、山羊、羊、
動物園における偶蹄類への感染の拡大。
更に、FMDVはハム、ソーセージなど加工食品中では数ヶ月以上という長期間生存し感染源となる。野生動物への感染拡大もあるだろう。


>また、流通を全て止めろ、という極論もありますが、
>経済効率の極めて悪い畜産産物を
>科学的根拠もないまま処分する経済損失に対する責任は
>誰がとるのか、という意見もあります。



科学的根拠もないまま支離滅裂な言動をブログにアップして純真なフォローワーをたぶらかせることに対する責任は誰がとるのか、という意見もあります。


>さらに、今回のように「口蹄疫が出た」というだけで
>風評被害が大きくなってしまえば、
>違う地域で発生したとしても、
>非難を恐れるあまり、発生したことを隠してしまう、
>といったことも出てこないとは限りません。
>こうしたことが起こると、
>どれだけ今回のFMDが広がりを見せたか、
>どんなところに流行したか、
>という疫学情報が不正確になり、
>今後の対策に活かせなくなることが考えられます。



口蹄疫に感染した場合の発症率は高い。また、伝染力も強い。
このため、感染は隠し通せないだろう。
また、京都府鳥インフルエンザ発生時に、隠蔽した結果、その農場がどうなったか、畜産経営者で知らない者はいない。


>実際、ウイルスでもその存在が分かってない方が
>分かっているものより断然多いのですから、
>人体に影響のないFMDをこれ以上、
>モンスターとして扱うことはまったく理にかなわないことです。



意味不明の文章。


あくまで、人体に対する影響しか考慮していない。
FMDはリストA級のモンスター的疾病。
モンスターとして扱わないのことはまったく理にかなわないことです。


>イギリスは政治不安を引き起こしたために、
>多量処分をしました。
>そうであれば、根拠に基づいた「殺さない」対策をし、
>その成功を世界に示すべきだと思います。



政治不安を引き起こしたためじゃなくて、感染が拡大したから。
根拠に基づいた「殺さない」対策なんて、実施している国はない。
evidence based っていうからには、まずevidenceが必要。
手順が反対。


>FMDウイルスがありふれたウイルスである以上、
>再び日本を襲うことも十分考えられます。



また、繰り返すが、清浄国ではありふれていない。
非清浄国でも、ありふれた状態でなくするために発生地域を厳密に区分し、
コントロールする努力をしている。


>今回のFMDウイルスよりも感染力が強いtypeが来て、
>もっと大きな広がり方をするかもしれません。



今回のタイプの感染力は既に十分強い。
このため、発生時にとる対策としては今回と同じだろう。
ただし、移動制限区域の見直し、ワクチンの発生初期における感染拡大を防ぐための積極的接種、FMD検査の国から地方への移管があるかもしれないが。


>だからといってそのたびに家畜を殺していては、
>経済損失も大きくなるばかりです。
>これらの費用はすべて私たちの税金から支出される事も
>考えてみては如何でしょうか。



だからといって、家畜を殺さなければ経済損失はおおきくなるばかりです。
これらの費用はすべて私たちの税金から支出される事も考えてみては如何でしょうか。


>今までやってきたやり方と違ったことをすると
>始めは強い反応があることでしょう。
>しかし、正しいことをやり遂げることは、
>結果として、世界に尊敬される日本を創ってゆくのではないでしょうか。



彼女のいうことをやれば、おそらく、世界からつまはじきものにされる。