木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」に対する指摘

木村盛世氏の口蹄疫に関するブログエントリーがあまりにもひどい。


彼女のフォローワーをみていると、市民運動家の方など、善良な方が多い。
そういった方々が、素直に彼女の発言を信じ込むと危険だと思って、指摘してみた。
とりあえず、ざっと書き上げたので、誤字脱字悪文状態であるが、アップしてみる。


木村盛世氏のブログ
http://kimuramoriyo.blogspot.com/

木村盛世氏のtwitter
http://twitter.com/kimuramoriyo


以下は、
木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―」
の引用およびplecostomus1のコメント。


>→木村盛世氏の引用部分

☆→plecostomus1のコメント


>口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.4―
>
> 宮崎県で家畜への口蹄(こうてい)疫感染が拡大している問題で、
>消費者庁は17日、食品業界や流通業界などに対し、販売の際に
>非感染を売り文句にするなど、消費者に誤解を与える不適切な表
>示を慎むよう要請した。
> 同庁などによると、口蹄疫にかかった家畜の肉や牛乳は市場に
>出回っておらず、また摂取しても人体に影響はない。しかし問
>題発生後、量販店やインターネット上で、「宮崎県産は使用し
>ていません」「口蹄疫の恐れのない産地の肉です」などの表現
>で食肉や加工品を販売している例が数例確認されたという。
>(2010/05/18-01:50) 時事ドットコム

>この記事をみて皆さん、どう思われますか。
>明らかに、宮崎県と言うだけで避けられる、
>というstigmatizationが生じています。



なぜか突然、難しい単語が登場。
stigmatizationの意味は、「汚名{おめい}を着せること、非難{ひなん}すること」
らしい。


>これは当初から私が恐れていた事態です。
>なぜこんなことが起こるのでしょうか?
>それはFMDという病気は家畜が感染したらとんでもないことにな
>る恐ろしい病気、という概念にとどまらず、
>人体にも悪影響をおよぼし、
>食べたら感染して死んでしまう、
>という誤った認識が広がり、
>日本中が不安と恐れの真っただ中にいるせい
>ではないでしょうか。



消費者庁によると、問題があった件数は数例が確認されただけ。
これは、2001年9月のBSE騒動のときよりはるかに少ないと思う。
実際に、国内初のBSE発生時の2001年9月直後に、新聞記事数は激増し、牛肉消費量は半分以下に激減している。


http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/irwg8/6321hortresearch.pdf


今回の宮崎県における口蹄疫発生に伴う牛肉消費量の変動についてはよい記事がみつからなかったのだが、下記の新聞報道によるとそれほど大きな変動はない。


http://www.minpo.jp/view.php?pageId=4107&blockId=8945146&newsMode=article


このため、「日本中が不安と恐れの真っただ中にいる」ということはなくて、大部分の国民は冷静に行動していると思う。
私の周囲でも、BSE騒動のときのような、牛肉は食べないという人々の反応や、焼き肉店が焼き鳥店に変わっていたという情報も聞かない。


>それでは、FMDとはどんな病気なのでしょうか。
>それはFMDウイルスによって生じる動物の感染症で、
>蹄が2つ以上に割れている動物が罹ります。
>代表例として、牛、豚、羊等があります。
>感染力(他の個体に広げる力)は強いのですが、
>成体では死にいたる確率は5%以下です。
>症状は口や蹄の付け根などにできるぶつぶつ(水疱)と熱な
>どです。
>大体1〜2週間で回復します。



詳しく説明すると、死に至る確率が5%なのは成豚の場合。
以下の総説が詳しい。木村盛世氏もFMDに関する知識がないままTweettwitterでたたかれたため、反省してこの総説で勉強したのだろう。


口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について(村上洋介)


http://ss.niah.affrc.go.jp/disease/FMD/japan/murakami.html


牛の死亡率は調査中。
なお、成牛や成豚における死亡率は低いが、FMDに感染すると産業動物としての価値を失う。これが、FMDが恐れられる最大の理由である。
木村盛世氏のブログのエントリーには、この認識が欠けているのが最大の問題点。


なお、AVISという世界の獣医師がFMDについて学習するサイトに、FMDの感染による症状が簡潔にまとめられているので、紹介する。


AVIS:
http://www.aleffgroup.com/avisfmd/index.asp


AVIS>Foot and mouth disease
http://www.aleffgroup.com/avisfmd/A010-fmd/mod4/4200-strat.html


乳用牛の場合:
乳腺上皮の感染により、直ちに50〜60%の乳量減少を起こす。
これは、泌乳期中もずっと続く。この結果、1頭の総乳生産量の25%が減少する。
更に、乳房が細菌による二次感染や乳房炎を起こす。この結果、乳産生能力の一部、あるいは全てが失われることになる。このため、しばしば早くと畜されることになる。


肉牛、肉豚の場合:
乳用牛に対するよりも、肉牛、肉豚に対するFMDの影響はより大きく、増体率の低下を招く。肉牛では成熟するまで更に10〜20%の肥育期間延長がある。
肉豚では成長が1〜2ヶ月遅くなる。イギリスのデータではFMDにより年間20%の肉生産の減少が報告されている。


子牛、子豚の場合:
死亡率は50%に達す。感染拡大時の子羊や子豚では100%に達する場合もある。
また、感染した母豚、母牛の乳房に病変が形成された結果、子牛子豚が母畜の乳を吸えなくなるという影響もある。


>人に対する影響ですが、人に感染することは極めて稀で、
>感染した動物の肉を食べてFMDに罹ることはありません。

>え?そうなの?と
>意外に思われる方もいらっしゃるでしょうが、
>これらの情報は「口蹄疫問題を考えるvol.1」に全部書いてあります。



繰り返すが、成体では死に至る確率は確かに低いが、先に記したようにFMDに家畜が感染すると、産業動物として成り立たなくなる。
木村盛世氏には常にFMDが産業動物の疾病であるという認識がかけている。
自分のフィールドから、人に対する感染性という観点からしかFMDについて
考えていない。
なお、口蹄疫に関する情報を得るのに、氏のブログで「口蹄疫問題を考えるvol.1」をまずみる人はいないだろう。


>FMDは症状をみると人間の手足口病によく似ています。
>また感染力と致死率ということに関しては、
>はしか(麻疹)と比較できる病気でしょう。
>麻疹は麻疹後脳炎など重篤な後遺症が残る可能性がありますから、
>重症度に関しては麻疹の方が高いでしょう。
>FMDの後遺症としては、
>乳が出にくい、肉質が落ちる、等がいわれています。
>しかし、麻疹は有効なワクチンがありますから
>予防可能という意味ではFMDと違います。



また、人の疾病と対比してFMDを論じている。


>このようなFMDに対して
>必要以上に過敏になっている私たちは
>既にパニック状態になっているのです。



先に記したように、宮崎県産の畜産物を含めて、国内で牛肉や豚肉の
消費の著しい減少はおきていない。
このため、大部分の国民はFMDに対して過敏になっておらず冷静に行動している。
もちろん、パニックにもなっているない。事実誤認である。
あるいは、パニックにさせたいのか。


>それではFMDの広がりを
>どうやって抑えたらよいのでしょうか。
>というよりもFMDを封じ込めることは出来るのでしょうか。
>残念ながら封じ込めは不可能に近い感染症の一つだといえるでしょう。
>まず、潜伏期があり、症状がないうちから感染させることがあります。
>治療法はなく、予防に使われるワクチンは
>100%の効果はありません。
>となれば、FMDは封じ込め不可能な病気と言わざるをえません。



FMDはOIEのリストA疾病という恐ろしい病気だが、決して封じ込め不可能な病気ではない。
現に、オーストラリア、アメリカをはじめとする先進国の多くは、FMD清浄国である。
FMD非清浄国の多くは、発展途上国である。
清浄国か非清浄国かの区別は、FMD発生状況およびFMDワクチンの接種状況によって決まる。


以下のOIEのHPに、OIE参加各国のどこが清浄国か非清浄国が記載されている。
(ただし、日本を含め一部アップデートされていない)


http://www.oie.int/eng/status/FMD/en_fmd_free.htm


ちなみに、最初の表に記載されているのが、清浄国でワクチン使用していない国。
次に清浄国であったが、現在、ワクチン使用中の国(現在の日本が該当する)。
以下は非清浄国。


どの国も清浄国になるために努力してる。
非清浄国になってもいいなんていう国はどこにもない。


>封じ込め不可能な病気の対策の基本は、
>「入ったら広がる」ことを前提に、被害を最小限に抑えることです。



繰り返すが、FMDは封じ込め不可能な病気ではない。


>我が国のFMD対策は、「疑わしきは殺す」
>というイギリス流のやり方です。



殺処分をはじめたのはイギリスであったが、1957年以後、OIEが定めた口蹄疫予防のための国際条約で規定された方法になっている。
つまり、世界標準のやり方。


>しかし、これはどれだけ効果があるかは
>議論の分かれるところです(「口蹄疫問題を考える vol.2」参照)。
>FMDの感染源は病気に罹った動物以外にも
>carrierと呼ばれる生物です。



正確には、
FMDの感染源は、病気に罹った動物以外に、以下が感染源となりうる。


・FMDウイルスに汚染された肉・畜産物(乳等)・厨芥(人の食べ残し)
・風による伝播・渡り鳥
・FMDウイルスを保持している家畜の輸入・移動
・汚染資材,器具,人
・野生動物


また、牛,羊,山羊,水牛,シカなどの反芻獣では、FMDに感染し回復した
後も、FMDウイルスを体内に保持し、新たな感染源となりうるキャリアーとなる。


>人間等FMDに罹る動物以外も
>carrierになる可能性があると言われています。
>このため、感染した肉を食べると危険だ!
>というメッセージが出てしまうのでしょう。



正確には、
キャリアになるのは、牛,羊,山羊,水牛,シカなどの反芻獣で、豚は、キャリアーにならない。


>このような過敏反応は、
>かつて緒方洪庵天然痘ワクチンを打ち始めたころ、
>「(ワクチンを)打たれると牛になってしまう」
>という風評被害が立ったことと似ています。
>それはワクチンが牛の天然痘から作られたからですが、
>当然牛になってしまうわけではありません。



重ねて言うが、現在、国内における過敏反応はほとんどない。
このため、天然痘ワクチンのエピソードは関係ない。


>FMDは動物の間ではごくありふれた感染症です。
>実際、日本や韓国、中国以外にもブラジルで発生していますし、
>ネパールにも疑い例が報告されています。



ブラジルはFMD非清浄国で、FMDウイルスが存在している。
ネパールの現状は不明。
中国は、正確な情報を表に出さないため詳細は不明だが、常在国と考えられる。
これに対し、日本や韓国は現在は発生しているが、FMDVが常在している国ではない。
先に記したように、先進国の多くがFMDVが存在しない清浄国であり、これらの国では、FMDVはごくありふれた感染症などではない。
木村盛世氏には、FMD清浄国、非清浄国という認識がそもそもないようである。


>病気に罹った動物の他に
>carrierが感染源となることは前にも書きましたが、
>牛や豚の集団でも15〜50%のcarrierが存在すると
>報告されています。



正確には、牛はキャリアーになるが、豚はキャリアーにならない。


>となればFMDは何時、どんな所で起こっても
>不思議ではないのです。
>それ故、清浄国(FMDfree)という概念自体がおかしいのです。



OIEにより、FMDは清浄国と非清浄国に区分されている。
清浄国FMDfreeという概念は、OIEにおけるFMDコントロールの基本概念。
それ故、「清浄国(FMDfree)という概念自体がおかしいのです」という
人自体が、おかしいと考えられる。


>今のままの政策を続けてゆけば、
>「抑え込み可能の危険な病気」という「空気」を信じている国民は、
>不安がいらだちと怒りに変わり、
>政府や地方自治体を非難し始めます。
>しかしそうしたところで誰も救われないのです。
>最後には多大なる被害と、憎しみだけが残ります。



FMDに対する現在の国民的認識は、「抑え込みが難しいが、人には感染しないため人にとっては危険な病気ではない」という状態だろう。

また、川南町、都農町を中心に続発しているが、これは、FMDVを爆発的に排出するFMDVの増幅動物である豚が感染し、畜産農家が密集している地域で感染が拡大したためであって、これら以外の地域への感染拡大は、現在、関係者の努力により封じ込められてる。


木村盛世氏のいう「今のままの政策」とは全頭殺処分を指していると考えられるが、現在、政府や地方自治体への非難は、政府の初動対策並びに被害を受けた農場に対する支援の遅れに対してであって、殺処分という防疫手段自体に対する非難は、多くはないと思われる。
むしろ、木村盛世氏のように影響力があるにもかかわらず中途半端な知識により無責任な発言をブログやTwitterで行うことの方が問題が多いと思う。


>この負の連鎖を断ち切るには発想の転換が必要です。
>発生してから今までの経過をみれば、
>今回のウイルスが突然変異を起こした
>supper killerウイルスではありません。
>となれば、FMDに感染しても危険はないのですから、
>殺すこともやめて、通常の正肉として販売すれば良いのです。



「supper killerウイルス」→「super killerウイルス」ね。
ここで、論理の飛躍。
木村盛世氏が言う「FMDに感染しても危険がない」のは、人間に対して言っているのだろうが、牛豚や他の偶蹄類にとって多大なる危険がある。


>感染した肉がさらなる感染経路になるのではないか、
>という人もいますが、
>蔓延した状況では不特定多数の感染経路が様々に絡み合って、
>どれか一つを遮断してもあまり意味がありません。



まず、蔓延していない。宮崎県の川南町、都農町を中心を中心とした一部地域におさまっている。また、宮崎県外では発生していない。


FMDに感染した牛豚の肉を市販した場合の危険性を考えてみた。

・食肉処理場への輸送経路の汚染
・食肉処理場内の汚染
・精肉として出荷された流通経路の汚染
・これら経路で働く人々の汚染

以上の経路を介してFMDVが全国の使用されている牛や豚の飼養農家へ進入、
また、小売り店から人を介した家庭で飼養されているミニブタ、山羊、羊、
動物園における偶蹄類への感染の拡大。
更に、FMDVはハム、ソーセージなど加工食品中では数ヶ月以上という長期間生存し感染源となる。野生動物への感染拡大もあるだろう。


>また、流通を全て止めろ、という極論もありますが、
>経済効率の極めて悪い畜産産物を
>科学的根拠もないまま処分する経済損失に対する責任は
>誰がとるのか、という意見もあります。



科学的根拠もないまま支離滅裂な言動をブログにアップして純真なフォローワーをたぶらかせることに対する責任は誰がとるのか、という意見もあります。


>さらに、今回のように「口蹄疫が出た」というだけで
>風評被害が大きくなってしまえば、
>違う地域で発生したとしても、
>非難を恐れるあまり、発生したことを隠してしまう、
>といったことも出てこないとは限りません。
>こうしたことが起こると、
>どれだけ今回のFMDが広がりを見せたか、
>どんなところに流行したか、
>という疫学情報が不正確になり、
>今後の対策に活かせなくなることが考えられます。



口蹄疫に感染した場合の発症率は高い。また、伝染力も強い。
このため、感染は隠し通せないだろう。
また、京都府鳥インフルエンザ発生時に、隠蔽した結果、その農場がどうなったか、畜産経営者で知らない者はいない。


>実際、ウイルスでもその存在が分かってない方が
>分かっているものより断然多いのですから、
>人体に影響のないFMDをこれ以上、
>モンスターとして扱うことはまったく理にかなわないことです。



意味不明の文章。


あくまで、人体に対する影響しか考慮していない。
FMDはリストA級のモンスター的疾病。
モンスターとして扱わないのことはまったく理にかなわないことです。


>イギリスは政治不安を引き起こしたために、
>多量処分をしました。
>そうであれば、根拠に基づいた「殺さない」対策をし、
>その成功を世界に示すべきだと思います。



政治不安を引き起こしたためじゃなくて、感染が拡大したから。
根拠に基づいた「殺さない」対策なんて、実施している国はない。
evidence based っていうからには、まずevidenceが必要。
手順が反対。


>FMDウイルスがありふれたウイルスである以上、
>再び日本を襲うことも十分考えられます。



また、繰り返すが、清浄国ではありふれていない。
非清浄国でも、ありふれた状態でなくするために発生地域を厳密に区分し、
コントロールする努力をしている。


>今回のFMDウイルスよりも感染力が強いtypeが来て、
>もっと大きな広がり方をするかもしれません。



今回のタイプの感染力は既に十分強い。
このため、発生時にとる対策としては今回と同じだろう。
ただし、移動制限区域の見直し、ワクチンの発生初期における感染拡大を防ぐための積極的接種、FMD検査の国から地方への移管があるかもしれないが。


>だからといってそのたびに家畜を殺していては、
>経済損失も大きくなるばかりです。
>これらの費用はすべて私たちの税金から支出される事も
>考えてみては如何でしょうか。



だからといって、家畜を殺さなければ経済損失はおおきくなるばかりです。
これらの費用はすべて私たちの税金から支出される事も考えてみては如何でしょうか。


>今までやってきたやり方と違ったことをすると
>始めは強い反応があることでしょう。
>しかし、正しいことをやり遂げることは、
>結果として、世界に尊敬される日本を創ってゆくのではないでしょうか。



彼女のいうことをやれば、おそらく、世界からつまはじきものにされる。