木村盛世氏のブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6 清浄国(FMD free)のお墨付きは意味があるのか。」に対する指摘
朗報である。
木村盛世氏(以下、もりりん)がやっと口蹄疫に関する発言をやめるらしい。
「疫学とは常識の学問である。既存の理解と違う結果が出ても、自然界での摂理に従う説明がつく。もう口蹄疫の議論から暫く離れよう。空気に支配されている輩に何を言っても無駄ある。これが我が国の実情だ。」
http://twitter.com/kimuramoriyo/status/16140525643
「空気に支配されている輩」の意味がよくわからないが、彼女に口蹄疫に関する発言をやめようという気にさせたことにplecostomus1の日記が少しでも関連しているのなら光栄である。
(たぶん、読んでないと思うけど。。)
さて、先のTweetが事実なら、最後になるであろうもりりんの口蹄疫に関するブログエントリー「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6」が投稿された。
最終回のお祝いとして、こちらも最後の指摘をする。
//→木村盛世氏の引用部分
☆→plecostomus1のコメント
口蹄疫→FMD
「口蹄疫問題を考える―危機管理の立場から―vol.6 清浄国(FMD free)のお墨付きは意味があるのか。」
http://kimuramoriyo.blogspot.com/2010/06/vol6.html
//国際的に、FMD freeであることが
//貿易の面で重要とされていますが、
//今回はFMD Freeとはどういうことか、
//果たしてそれ自体、達成可能なものなのか、
//という事について書いてみます。
//現在の清浄国の定義は、OIE(国際獣疫事務局)の定義に基づき、
//我が国では農林水産省が規定しています。
//(http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie6.html
//http://www.maff.go.jp/j/syouan/kijun/wto-sps/oie/pdf/rm5fmd.pdf)
//これを見る限り、
//ある一定期間FMDの発生が抑えられているというのが
//「清浄国」という条件のようです。
☆
正確に言うと、その国がFMD清浄国かどうかは、農林水産省がOIEに申請して認定を受ける。
//しかしながら、本当にdisease freeというのであれば、
//この世界からFMDウイルスがなくなる事が必要です。
//これは根絶(eradication)といい、
//制圧(control)とは明確に分けられている概念です。
☆
ウイルス感染症の征圧状態を定義する用語については、以下のサイトが詳しい。
霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第180回)9/13/2009 新刊書「史上最大の伝染病・牛疫:根絶までの四〇〇〇年」:
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsvs/05_byouki/prion/pf180.html
以下、引用。
「ところで、ワクチンによるウイルス感染症との戦いは、戦略的に見ると達成状態により「制圧」、「排除」、「根絶」の三段階に分けられている。
第一段階の「制圧」は、ワクチン接種により、ウイルス感染の発生頻度や激しさを無害なレベルにまで減少させることができた状態をいう。
第二段階の「排除」は特定の国または地域でウイルス感染の発生が見られなくなった
状態であって、獣医学領域では「撲滅」の用語の方が一般的であるため、本書ではこ
ちらを用いる。
第三段階の「根絶」は全世界で発生が見られなくなった状態である。」
宮崎県は、「制圧」しようと努力している状態。
FMD free国、地域は、「排除」「撲滅」された状態。
今まで、「根絶」されたウイルス病は天然痘のみ。
ただし、口蹄疫と並ぶOIEリストAの牛の海外悪性伝染病である牛疫は、2010年には、「根絶」される予定。
これについては、先の参照したサイト「霊長類フォーラム:人獣共通感染症(第180回」が詳しい。
//しかしながら、本当にdisease freeというのであれば、
//この世界からFMDウイルスがなくなる事が必要です。
OIEにより、FMD freeと認定されるのは、国単位、あるいは、国の中にある一定地域
(FMD free zone)単位である。
OIE参加国の清浄国、非清浄国 区分けリスト:
http://www.oie.int/eng/Status/FMD/en_fmd_free.htm
例えば、オーストラリアとアメリカ合衆国は、FMD free(口蹄疫清浄)国、
アルゼンチンはFMD非清浄国であるが、国の中には、FMDワクチンを接種していないFMD free zoneがある。
決して、地球全体を指してFMD freeといっているわけではない。
このため、ある国、地域をFMD freeと認定することに、この世界からFMDウイルスがなくなることは必要ではない。
あまりにも、論理が飛躍しすぎだ。
また、もりりんはこんなこともTweetしている。
「牛のcarrierは15から50%。となれば、清浄国(FMD free)という概念自体が存在するはずがない。」
http://twitter.com/kimuramoriyo/status/15928354398
もりりんは、どうやら、清浄国の牛豚に15〜50%のキャリアが存在すると考えているらしい。
元気な牛豚の中に、FMDウイルスに感染した個体が存在すると。
これは間違っていて、以下の2点から、FMDウイルスに感染した個体は摘発される。
(1)
清浄国はFMDワクチン未接種なので、家畜がFMDウイルスに感染すると発症することにより侵入がわかる。
なお、FMDウイルス株によっては、ある特定の家畜で不顕性感染をすることがある(例:台湾のイエローキャトル)が、その強い伝染性力により、結局は、別の畜種(豚など)に感染し発症することにより侵入が判明する。
(2)
発症しても農家が隠したらどうするのという意見もあるだろうが、他の農場へも感染はすぐ広がる。
また、清浄国認定の条件のひとつに、「FMD発症家畜の早期摘発体制が整備されている」という点がある。日本なら、畜主→臨床獣医師→家畜保健衛生所(全国に200カ所近くある)→動物衛生研究所という体制が整備されている。
なお、もりりんのいう「牛のcarrierは15から50%」という報告は見たことがない。
Twitterでも彼女の発言に対してソースを出せという指摘が複数の方から寄せられていたが、これに対するもりりんの返事はなしであった。
もりりんの妄想か思いこみ、あるいは恣意的発言であろう。
(>もりりん ソースがあればコメント、お待ちしております。)
この時に限らず、もりりんって矛盾があったり非論理的だった発言に対してTwitterで指摘されても回答しないのだよね。
//それでは、ウイルスを根絶するためには
//どうしたらよいでしょうか。
//ウイルスに特効薬はありませんから、
//治療薬で退治することは不可能です。
//となれば、感染経路を遮断する以外にはありません。
☆
//それでは、ウイルスを根絶するためには
//どうしたらよいでしょうか。
先に述べたように、FMDウイルスをある国、地域から(「排除」)「撲滅」することは可能。
しかし、地球上から「根絶」することは、現在、できていない。
これは、FMDウイルスの以下の性質による。
(1)宿主域が広い
(2)感染個体がキャリアとなる
(3)ウイルスのタイプ、サブタイプが多岐にわたり、全ての株に対して有効なワクチンが存在しないこと
ヒトの天然痘と牛の牛疫は、上の3つの問題がなかったため、撲滅→根絶が容易であった。
以下は、現時点では「根絶」することはできないので、「撲滅」と読み替える。
//ウイルスに特効薬はありませんから、
//治療薬で退治することは不可能です。
//となれば、感染経路を遮断する以外にはありません。
伝染病の発生には、「宿主」、「病原体」、「感染経路」の3要因が関与する。
撲滅するためには、3要因に対し、対策を実施する。
すなわち、感染経路を遮断する以外にもある。
「宿主」と「病原体」に対しては、殺処分・消毒により、ウイルス量を減らす・無くすこと、また、必要に応じて、リングワクチネーションを行うこと。
//感染経路を潰すには2つの条件があります。
//第1に感染経路が明らかであり、
//物理的に遮断できること。
//第2に有効な予防手段が存在することです。
//この条件を満たし、
//実際に地球上から根絶されたウイルス感染症は天然痘です。
//ヒトの天然痘ウイルスは
//感染したヒトの口や鼻から排出されるウイルス、
//あるいは水疱が破れてかさぶたになった部分から
//まき散らされるウイルスを吸い込むことによってうつります。
//天然痘には、ほぼ100%効果的な予防方法である、
//天然痘ワクチンがあります。
//このため、天然痘患者を隔離し、
//患者の周りにいる人20人にワクチンを打つことによって、
//1980 年、天然痘患者はこの地球上から消えました。
//ポリオも感染経路が分かり、まだ根絶には至っていませんが、
//WHOの取り組み方が間違っていない限り
//近い将来根絶しうるウイルス感染症です。
//それではFMDはどうでしょうか。
//感染経路は明らかになっている中でも、多岐にわたります。
//同種の動物間だけでなく、
//他の動物、昆虫、水、風などです。
//動物には人間も含まれますから、
//これらの感染経路を全て遮断するためには
//人間までも殺しつくさなければなりません。
//たとえそうしたとしても、
//水や空気の流れを遮断することは不可能です。
//また、予防法についても、
//ワクチンを含む有効な手立てはありません。
☆
先に述べた方法で、撲滅はできている。
//人間までも殺しつくさなければなりません。
ここまでいわれると、指摘する気もおきない。
//こうなると、FMD ウイルスを
//地球上から根絶することは無理だ
//と言うことがわかります。
//根絶できない以上、一度流行が収まっても、
//必ずまたやってきます。
//そのようなウイルスに対して、
//「FMD free」という概念は当てはまらないのです。
☆
//こうなると、FMD ウイルスを
//地球上から根絶することは無理だ
//と言うことがわかります。
根絶は現時点では難しいが、撲滅は可能である。
//ここでもう一度、FMDがどういう病気か振り返ってみましょう。
//蹄が2つに割れている動物を襲う感染力の強い病気だが、
//多くの動物は治癒します。
//ヒトにうつることはなく、感染した肉を食べても問題ありません。
//流行が収まっても、
//またちょくちょくやってくる感染症であり、
//super killerでもないウイルスに対して、
//清浄国のお墨付きを与えること自体、
//理にかなったことではありません。
☆
//流行が収まっても、
//またちょくちょくやってくる感染症であり、
この点だけは、同意する。
日本では、92年間発生がなかったのに、2000年に発生、10年後に再び発生した。
これは、以下の要因がある。
(1)感染力の強いOタイプが東南アジアを中心に広がった
(2)東南アジア地域で国間の人物の移動が盛んになった
今後は、鳥インフルエンザと同様に、常に厳重な警戒が必要だなあ。
(豚コレラとアフリカ豚コレラも同様に。。。)
//清浄国のお墨付きを与えること自体、
//理にかなったことではありません。
FMDウイルスが侵入してくる可能性はあるが、FMDウイルスは存在しないことが確認された国、地域を清浄国とすることは理にかなったことですね。
//科学的根拠に基づかない、
//清浄国(FMD free)という概念は不適当だ、
//と声を上げるのは「和牛」という希有なブランドを生産する、
//我が国こそが先頭に立ってするべきことではないのでしょうか。
☆
ここまでいうので、あれば、もりりん自ら、農林水産省へ乗り込んで、説得して欲しい。。。
最後に、興味深いサイトを紹介する。
南米の国、ウルグアイにおける口蹄疫制圧に至る取り組みを紹介されている。
口蹄疫非清浄国がなぜ、口蹄疫清浄国と認可されるように努力するのかがよくわかると思う。
「口蹄疫を制圧した国の牛肉生産」
http://members.jcom.home.ne.jp/inoue-uru/uruguay/fmd_free.htm